元日本代表MFで、W杯で3大会連続得点の実績を誇る本田圭佑氏が、改めて「指導者ライセンスを取らずに指導者としてW杯優勝を目指す」と公言しました。
現役を引退したわけではないが、本人も「今後は選手としてよりも指導者の比重が重くなる」としている。
カタールW杯の解説も大好評で、常に注目度がトップクラスなだけに、これらの発言がサッカー界における今後の大きな議論のテーマとなる可能性が出てくるかもしれません。
内田篤人氏や中村憲剛氏など、かつての仲間たちは今後JFAS級ライセンスに挑戦することになっているため、本田圭佑氏の選択はまさに対極の道となる。
この記事では、そんな指導者ライセンスを取らずに指導者としてW杯優勝を目指す本田圭佑の考えは「あり」なのかという疑問について解説していきたいと思います。
本田圭佑氏は、現役を引退せずにカンボジア代表の実質監督を務めるなど、これまでも常識に捉われない考え方で自身の目指すべき道を進んできた。
指導者ライセンスを持っていないため、「GM(ゼネラルマネージャー)」という肩書ではありますが、指導者としての経験をすでに積んでいるのです。
1月3日にカンボジアサッカー連盟が本田氏のGM退任を発表しており、今後は本格的に指導者として活動していくことになるでしょう。
しかし、問題となるのが「指導者ライセンスを持っていない」という点です。
一般的な常識で考えれば、指導者を目指すのであればJFAの指導者ライセンスを取得するのは必要不可欠です。
ましてや、「代表監督としてW杯優勝する」という目標を掲げるのであれば、絶対に必要だと考えるのが普通でしょう。
しかし、本田氏が目指すのは、指導者ライセンスを取らずに「実質監督」として指導する道でした。
この本田圭佑氏の行動を見ていると、疑問に思う人も多いはずです。
「指導者を目指すならライセンスを取った方が良いに決まっているのでは?」という疑問です。
確かに、日本では(世界でも)ライセンス制度がスタンダードである以上、それを取得しながら指導をしていくのが「常識」です。
しかし、本田氏は、「ライセンスがなくても指導者として活動できる」と考えています。
実際にカンボジア代表もライセンスのない状態で指導していましたし、例えばJリーグや代表の監督業も、実際にライセンスを持っている人を監督にして、自身はGMとして実質監督を務めることができると考えているわけです。
なぜそういった行動を取るのかといえば、本田氏は「現役選手が引退した後にすぐにJ3などのクラブで指導者として活動できる方が良い」と考えているからです。
指導者ライセンスは、いきなり誰でも代表監督を務めることができるS級ライセンスに挑戦できるわけではありません。
S級ライセンスは、以下の条件を満たした人だけが挑戦できます。
さらに、A級ライセンスを取得するのもかなり難しくなります。
B級ライセンスを持っていることに加え、1年以上の指導経験が必要となるのです。
指導者を目指す人は、現役時代にC級やB級まで取得しておき、引退後にA級に挑戦する流れとなります。
S級に関しては、毎年20名ほどしか受講できない「狭き門」なので、挑戦するだけでも難しいのです。
したがって、代表監督やJリーグの監督を務められるS級ライセンスを取得するためには、現役引退後3年以上は確実に必要となるわけです。
結論から言えば、「なし」だと言えるでしょう。
本田圭佑氏は、「ライセンスがなくても指導できる」と主張していますが、ライセンスの受講では様々な知識を得ることができます。
運動生理学やスポーツ心理学、マネージメント論、コーチング論など、監督業に役立つ知識を得ることができるのです。
さらに、救急救命法などの知識も得られます。
全体練習時に選手が急に倒れたならば、救急救命法の知識のある指導者がいるため、ライセンスがない実質監督でもOKですが、練習後に個人指導している時に選手が倒れたならばどうでしょうか?
救急救命法を知らない実質監督は、その選手を救うことができず、最悪の事態を招いてしまう可能性もあります。
「救急救命法」を個人的に学べば問題ないという意見が出るかもしれませんが、それが監督になるのに必須ではないのであれば、勉強しない指導者も必ず出てくるはずです。
そういったムラのある指導レベルにならないようにするためにも、指導者ライセンスは必須なのです。
今回は、指導者ライセンスを取らずに指導者としてW杯優勝を目指す本田圭佑の考えは「あり」なのかという疑問について解説してきました。
本田圭佑氏が「ライセンスなしで指導者としてW杯優勝を目指す」と公言したことで、今後議論が活発に行われるようになることでしょう。
現時点では、「なし」かもしれませんが、議論を重ねることは非常に良いことです。
日本で新たな「指導者の形」が生まれれば、それは日本サッカーの前進に繋がるかもしれません。