日本人は世界的に見れば非常に恵まれた環境で暮らしていますが、すべての人が幸せに生きているかというとそうは言い切れません。
その他の先進国も同様です。
飢餓で失われる命よりも肥満が原因でなくなる命の方が圧倒的に多いのです。
欲求のバランスが崩れてしまっている現代人は、「マズローの欲求5段階説」を参考にしてもう一度自らの暮らしを考え直した方が良いと言えるかもしれません。
この記事では、そんなマズローの欲求5段階説から読み解く「人の幸せ」について解説していきたいと思います。
「マズローの欲求5段階説」は、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが発表した理論です。
1943年に「サイコロジカル・レビュー」という学術書で掲載された「人間動機理論」の中で発表されました。
マズローは、人間の利己的な欲求を「生理的欲求」「安全欲求」「所属と愛の欲求」「尊重欲求」「自己実現欲求」という5つの言葉で表現しました。
アメリカ合衆国の元大統領であるリンカーンや理論物理学者のアインシュタインなど、人類に大きな影響を与えた人物のモチベーションを研究することで編み出されたとされています。
また、1971年にはこの5つの欲求に「自己超越」という欲求も付け加えられました。
検証可能なデータに基づいていないことや、文化の違いを考慮していないといって批判があることは確かですが、自分の幸福を見つめ直す際に照らし合わせる指針としては非常に有効であると言えるでしょう。
第一段階目は「生理的欲求」です。
生理的欲求とは、「食べる」「寝る」「排泄」「呼吸」など、生物が生きていく上で絶対に欠かせない部分となります。
この欲求が満たされていないと、生命の危機を感じ、幸福度は急激に低下してしまいます。
第二段階目は「安全欲求」です。
安全欲求とは、病気や怪我をした時でも治療を受けられたり、「安全に移動したい」「安全に仕事がしたい」など、安全に暮らしていく上での欲求となります。
また、安心して暮らすために必要なお金に対する欲求もこの段階のものであると言えます。
第三段階目は「所属と愛の欲求」です。
所属と愛の欲求は、「友人や家族などと親和的な関係を築きたい」、「会社や学校などに受け入れられたい」という欲求を指します。
現代の日本では、この欲求が満たされずに強い孤独感を感じてしまう人が増えてきていると言われています。
第四段階目は「承認欲求」です。
承認欲求という言葉は、ここ数年でよく使われるようになってきたので、スタンダードな欲求となりつつありますよね。
「他者から尊敬されたい」と感じる欲で、出世欲や名誉欲などの他にも「SNSでいいねをたくさん貰いたい」「フォロワーをたくさん獲得したい」という欲求などもこの第四段階にあてはまります。
第五段階目は「自己実現欲求」です。
自己実現欲求とは、「自分はこうありたい」「こう生きたい」といった欲のことを指します。
自己啓発活動を積極的に行っていた李、「生きる意味」を考えることもこの欲求によるものだと言えるでしょう。
第四段階目までは「欠乏欲求」であるのに対して、この第五段階目は「存在欲求」となり、実現させるのが非常に難しくなっています。
ちなみに、この上の段階の欲求(第六段階目)であるとされる「自己超越」は、見返りを求めず目的のみに没頭することを指していて、この欲求を満たせるのは全体の2%に過ぎないと言われています。
幸せになりたいと強く願っている時、人は三段階目以上の欲求に集中してしまいがちです。
特に日本人にとって、食事をしたり安心して寝られるといったことは当たり前であるため、ないがしろにされがちです。
しかし、長期的に幸せであり続けたいのならば、第一段階、第二段階の欲求を一定以上のレベルで満たすことも重要なのです。
栄養ある食事を摂ったり、睡眠の質や時間を意識したりすることや、災害が起こった時の避難場所の確認や防災リュックを用意するといった基本的なレベルを維持するべきです。
そのうえで会社や学校、恋人や友達、家族との関係、そして他者から評価されるような行動や言動などを発信していくのです。
これらの段階をバランスよく満たしながらも、「自分らしい生き方」に集中していくべきだと言えるでしょう。
今回は、マズローの欲求5段階説から読み解く「人の幸せ」について解説してきました。
先進国である日本では、「生きるために最低限必要なこと」が当たり前ゆえにないがしろにされてしまっているように思えます。
しかし、マズローの欲求5段階説にあるように、すべての欲求の段階がそれぞれ重要で、特に下の段階はしっかりと一定以上満たしておかなければ幸せにはなれないのです。
ぜひこの説に自分の暮らしを当てはめて考え、「今の自分には何が足りないのか?」を見つけてみてはいかがでしょうか?